小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2010年 5月1日(日)
第65話:世の中いつもままならぬ!
■前回のあらすじ…合同展の参加担当者の初めての顔合わせで大いに盛り上がった翌朝、沖田が出社すると沢田部長に呼ばれた。

『おはようございます』と部長の席に行くと、
「おはよう。昨日はどうだった?」と笑顔の沢田部長。
『ええ、もう初対面とは言えない盛り上がりでしたよ。それに合同展のネーミングまで決まりました。』と沖田。
「ほう、なんて言うんだ?」と興味津々な部長。
『合同展ステージです。これから幕を開けて、回を重ねて大きな舞台にしていきましょうという意味で【ステージ】です。』と元気な沖田に、
「結局最終の参加はこれだけだったっけ?」とメモを見ながら意味ありげに聞く部長。
『ええっと、まず児島社長のオカヤマ株式会社さんと、児島社長紹介の浅草のバッグメーカー株式会社大和田の和田さん。会場の持ち主の株式会社アイラインの横川さん、その友人のアクセサリーデザイナーのアラン・コーポレーションの太田圭子さん、そして我々の合計5社ですね。』とメモを確認しながら指を折る沖田。
「その会場は大きいのか?5社が展開できるほど…」と部長。
『まあ、贅沢を言えばキリがないですが、太田さんのアクセサリーは、アパレルほど場所が必要ないそうですし、和田さんのところも棚什器で何とか高さで表現すると言っていました。ブースは間口6m×奥行き2.7mですから、1社が5坪ほどです。全体で80坪程ありますから、まあ共有スペースを入れても余裕ですね。昨日配置も決めましたし…』と、沖田。
「そうか、余裕があるのか。あと1ブランドぐらいは入れそうか?」と爆弾発言の沢田部長。
『えっ?ちょっと待ってくださいよ。余裕ですけど一応ギリギリの配置なんです。それにもうこの5社で頑張りましょうって役割分担まで決めたんですよ。今更増やすなんて言えませんよ…どこなんですか?』と慌てる沖田。
「うん?う〜ん…」と言葉を濁す沢田部長は、
「いや、社長から…」とまだじれったい部長。
『どこの社長ですか?』と今にも部長に噛みつきそうな沖田。
「うちの河本社長が、昨日ここにきて合同展の参加企業名を見ていきなり言ったんだよ。」『何てですか!』と沖田。
「本体も出せないかって」と苦しそうな部長。
『なっ、何を言い出すんですか。前に社長は「無名な合同展に本体ブランドが出せるかっ」って権幕だったじゃないですか。だからうちの愛?T?愛(aitai)で、まず実績を作れって言ったのは社長ですよ。一体どの参加企業名を見てそんな問題発言をしたんですか?アイラインですか?』と食ってかかる沖田。
「この太田圭子さんだよ。」とメモを指差す部長。
『えっ?アクセサリーデザイナーの太田さん?個人ですよ。』と、トーンが落ちて疑問符の沖田。
「いや、私も突然言われたからまったくわからないんだが、社長がこのメモの太田さんを指差しながら、「彼女が本当に出るのか?だったら本体も出すぞ!沖田にそう言ってくれ」と偉く勢い込んで何も言わずそのまま出て行ったんだよ。」と戸惑う沢田部長に、
『直接社長に聞きます。その方が早いし、気になるし。部長も行かれますか?』と言う沖田に
「当然!」と部長も立ち上った。

■急な話の展開に戸惑う二人。内線で社長に確認してから社長室に向かった。そこで聞いた意外な事実とは…