小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2010年10月 3日(日)
第51話: 「表と裏」
■前回のあらすじ…合同展の参加について盛り上がったチームだが、紹介された東京の連絡先が沖田にとって思わぬ展開になる相手だった。

受け取ったメモにあった名前と会社名を見て、
『えっ、この人ですか!』と思わず声を出す沖田。
「知ってるんですか?その内藤さんて言う人」とメモを覗きこんだ藤原が声をかけた。
『うん、実は前の会社の先輩にあたる人なんだ。専門店部隊のかなりやり手の人なんだけど、結構いろんなところでぶつかって波紋を呼んでたんだよなあ…。僕が退職する3年ぐらい前に、当時の社長と意見が合わず会社を辞めて独立したんだよ。そうかあ、内藤さんが絡んでるのかあ…』と、動揺が隠せない沖田だった。
「でも、力のある人なんでしょ、その内藤社長って言う人は。時々聞きますよその会社のブランド名は。」と藤原。
『うん。営業力もあるし、キャラ的にも別段悪くない人なんだけど、結構我が強くて、自分の思う通りにならないとキレるタイプかな。』
「へえ〜。よく社長出来ますね、そんな性格で。」と突っ込む藤原。
『普段の人当たりは普通だし、そうしょっちゅうキレてる訳でもないし…。』と言い訳している自分が何だか変だったが、
『まあ、話しを聞くだけでも聞いてみるかな。久しぶりだし…ただ覚悟しないと話しが長いのよ。しかもエスカレートするとだんだん関西弁が強くなってくるから…』と言いながら電話をかけた。たまたま内藤社長は接客中だったが、明日の午前11時に伺いたい旨を伝え、しばらく待たされてOKがもらえた。
そして翌日…
『ご無沙汰しています。』とショウルームに通され、すぐに現れた内藤社長に緊張しながら挨拶した。
「沖田、元気やったか。久しぶりやなあ。もう辞めてながいんか?」と聞く内藤。
『一昨年の希望退職からですから、もう1年半です。今の会社の営業部長に拾ってもらいました。こちらが同じチームの藤原です。』
「営業の藤原と言います。まだまだ駆け出しですので、これからも宜しくお願いします。」
「なかなかの好青年やな。しっかりしてるやんか、楽しみやな沖田。聞いてるで、なんか新しいブランドを任されたとか・・・」と笑顔の内藤。
『ええ、まあ。まだまだ始まったばかりだし、僕は内藤さんと違って百貨店専門だったから、専門店卸のことは一から勉強中です。』と沖田。
「専門店も大変やぞ、ただ、今の百貨店ほど大変ではないけどな。」と内藤。
「内藤社長の会社は専門店だけですか?」と聞く藤原。
「いや、色々チャレンジしているところだが、百貨店だけやってないんや。うちの規模では無理だから。地方の問屋と専門店相手に細々と売ってますワ。あとネットと。」とおどける内藤。
『ところで、今日伺ったのは、内藤さんが出られてる合同展のことなんです。』と話題を変える沖田。
「合同展Rootsのことか。」
『そうです、もう何回か出られているんですよね。』と沖田。
「東京、福岡で3回かな。でももう次から出るの辞めるよ。」と内藤。
『えっ?出ないんですか?一体どうして、他で聞くと結構盛り上がっているっていう話しですけど。』と動揺する沖田。
「あかんねん、あれは…」と顔が曇る内藤社長。「あれな、実はな…」と話しが続く。

■意外な話しに驚く二人。内藤社長の口から出た合同展の真実とは一体…