小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2010年 9月 20日(月)
第50話: 「神のみぞ知るめぐりあわせとは…」
■前回のあらすじ…愛?T?愛(aitai)ブランドの拡販にアイデアを出し合っていたメンバーが、「合同展」というキーワードに盛り上がった。

知人に電話で確認をしたデザイナーの土井がミーティングの席に戻ってきた。
「どうでした?」とせかす藤原。 
「うん、その合同展は「Roots」と言う名前らしいわ。もう4年ぐらいやっているらしいの。福岡のまだ若いメーカー4社と、東京のメーカー3社と同じメンバーでやっているんですって。」と土井。
『へえ〜、面白そうですね、それ。』と沖田の目が輝く。
「なんでも、福岡のメーカー・・・という程の規模ではないらしいんだけど、その人たちが博多で小さな合同展示会をやっていたら、隣のホールで東京から来ていたメーカーの社長とたまたま知り合って、お互いのホームグランドで一緒に合同展をやって、お互いのお客様を紹介し合いましょうかというノリになったらしいの。」と土井。
「ふんふん、つまりホームアンドアウエイだな」とサッカー好きな藤原らしい言葉。
『うちでも入れるんでしょうか?』と企画アシスタントの中谷も興味津津だ。
「さあ、その辺は私も判らないんだけど、友人から、よければその東京のメーカーの社長を紹介しますから直接聞いてみれば?って言われたわ。」
『ぜひ一度話しを聞いてみたいですね。』と沖田。
「参加できたらいいですね。」と藤原もかなり乗り気だ。
「じゃあ、一度連絡を取ってもらってアポを取れるように頼んでもらうわ、そのあとは沖田さんに任せるわね。」と早速友人に電話をかける土井女史。
「いやあ、何だか面白くなってきましたね。もしそれに出れれば、九州と東京のその人たちのお客さんを紹介してもらえるってことですよね、ラッキーだなあ…」と、呑気な藤原。
『ちょっと待ってよ。我々は今、紹介出来る取引き先が少ないのに、合同展に出してもらえるんだろうか?やっぱりギブ&テイクがなければダメなんじゃないだろうか・・・』と、不安になってきた沖田。
「そう言えばそうですよね、しかも展示会の日程もうちと合うのかどうかさえ判らないし、僕自身その合同展Rootsに出展しているブランドさえ知らないから、うちのブランドとテイストが合うのかどうかさえ気にしていませんでした。」とすこしビビる藤原。
『そうだよなあ…』と、二人がそんな会話をしていたところに土井が戻ってきた。
「明日ならその社長が会社に居るから、いつでもどうぞってことになったわ。時間はこちらでアポを取ることになったからね。ええっとこれが連絡先。じゃあ、沖田さん、あとはヨ・ロ・シ・ク!」とウインクする土井女史から、受け取ったメモを見た沖田が、慌てて声を出した。
『うわっ。マジっすか、この連絡先と社長名は・・・』
「そうよ、あら?沖田さん知っているの?その社長を・・・」
『知ってるも何も・・・』と、口ごもった沖田が『こうなるんだなあ』とため息をついた。


■渡されたメモにあった名前に異常に反応した様子を見たメンバーは、沖田でも慌てて取り乱すこともあるんだと思ったのだ。そしてその人物とは・・・