小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2010年 5月 30日(日)
第42話: 「営業の剣が峰に…」
■前回のあらすじ…面接に来たサブチーフの友人、デザイナー土井さんの社長面接が終了し、その日の夕方社長室で内容検討が始まっていた。その結果に沖田が期待していた矢先に…

沢田部長の電話の内線が鳴った。
「社長からお呼びだ、きっと企画のことだろう。ちょっと行ってくる。」
『いってらっしゃあい。頼みますよ〜』と軽い沖田。
それから1時間後、沢田部長が戻ってきたが何だか浮かない顔だった。
『あれ、どうしたんですか部長、何だか難しい顔していますけど、まさか土井さんがダメなんてことはないんでしょう?』と不安そうな沖田。
「いや、土井さんの件は社長も大西チーフも絶賛なんだが…」と沢田部長。
『だったら良かったじゃないですか。これで土井さんがOKであれば、愛?T?愛ブランドも安泰ですよ。あれ?シャレじゃないですよ…。後は営業で頑張って売るだけだし…』と、まだ軽い沖田。
「その営業だが、早急に組織変更を考えてくれと社長に言われた。」
『えっ、どういうことですか?』と引き締まる沖田。
「次の1月の夏展までに営業部の動きをブランド制にしていくことになった。そして来年7月の決算以降、正式に事業部制となる。」
『そういえば、去年の夏から社長はそれっぽいこと言っていましたよね。』
「そうだ、しかし営業経費がかさむので、私がなんとか食い止めてきたんだが、今回の土井さんのことがきっかけで、もっとブランドの利益と経費のバランスを判り易くして、売り上げをどう上げるかを社員に判るようにしたいとのことだ。」
「明日はみんな出張から戻ってきているからこのことを説明する。」
『今までのように、営業はどちらの商品も売れるということがなくなるんですよね。』
「そういうことだな。」
『僕は前の会社でもそうだったので、事業部制のほうが責任感がついて動きやすいのですが、うちみたいな小さな会社で事業部ごとの動きをすると何となく社内で摩擦が起こりそうですけどね…。』
「それを調整するのが俺の役目だ。そして事業部リーダーの責務でもある。」と厳しい口調の沢田部長は更に、
「社長も来年は大きな変革の年になると言っている。つまり今までのようなうちの仕組みでは他社に太刀打ちできなくなると見ているみたいだ。そのために営業部がまず率先して動いてくれとも言われた。」
『厳しいですね。でもやりがいはあると思うし、僕はさらに愛?T?愛ブランドに専念できるからいいんですけど。』
「愛?T?愛の営業人員も減るかも知れんぞ。」
『それは…でも、今の売上では贅沢は言えません。展示会日程だけでも本体と変えて頂いたのですから、これから本腰を入れて販路を拡大しなければなりませんね。』
「土井さんがOKであれば、それこそ背水の陣でチーム一丸になって動かないと社長の今の考えではブランド廃止もありうるからな。」
『それだけは何としても避けたいです。僕も折角社長や部長に厳しい状況の中で拾ってもらってブランドを任されたのですから、何んとか答えも出したいです。』
「頼んだぞ」
『やるだけやります!』唇を引き締めた沖田であった。


■翌日、営業部ミーティングで沢田部長が提示した内容は…