小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2009年 10月 25日(日)
第27話: 顧客満足は自己満足?
■前回のあらすじ…実施棚卸によって営業マンの在庫に対する意識づけと、社内不正を防ぐという難問に取り組んだ矢先に、総務から朗報が営業部に廻ってきたのだが…。

本体ブランドは歴史もあり認知度もあったが、やはり新ブランドに対する顧客の認識はまだまだであった。ブランド名の「愛?T?愛(aitai)」ですら覚えられていない。そのため新ブランド担当の沖田も、手作りのカタログやDMを作り、告知用として配布していた。
総務からの知らせは、本体ブランド15周年記念として、カタログを作ると同時にホームページ(HP)もリニューアルすると言うものだった。その時に、新ブランドもページの中で紹介されることになった。そのイメージを沖田と企画が考えることになったのだが、沖田としては有難くも心の中で不満もあった。
「沢田部長、社長からHPの件は聞かれていると思いますが・・・」
『ああ、次の春展に間に合うように進行中みたいだな。君の方も同時進行でやることになったと聞いたが、何か問題があるのか?』
「問題と言うより、根本的なことなんですが、本体ブランドは60代ターゲットで、百貨店中心です。でも愛?T?愛(aitai)は、40代の専門店向けブランドですよ。それを同じHPの中で表現するのはどうかと思うんですが…」
『それが問題なのか?俺はその辺がアナログだから良く判らんのだが、昔からうちにあるHPは、お客様向けと言うより会社概要を知らせるリクルート用みたいなもんだ。だから更新もされず、イメージ写真も古い。俺もあれはどうかと思っていたんだが。』
「社長はネットについてはどうなんですか?うちの会社はまだネット環境は良い方だと思います。ただ触る人が少ないだけで…。」
『社長は結構見ているみたいだ。ただあんまり深くは知らないみたいだが、理解はしてくれている。』
「ですよね。と言うことは、HPをどこ向けにするかで、作り方や見せ方が違うじゃないですか。社長はどこに向けて作ろうとしているんでしょうか?」
『そりゃ顧客だろ!』
「顧客って誰ですか?」
『バイヤーだよバイヤー。違うのか?』
「ええ、ですから、バイヤーか消費者(エンドユーザー)のどちらにするかによって内容が違うと思うんですよ。例えば展示会日程を載せるのか載せないのか。取り扱い店舗を載せるのか載せないのかなど、内容が全然違うと思うんです。どこに向けて発信するつもりでしょうか?」
『そうだな・・・それは俺も聞いていなかったな。』
「それによって、本体ブランドと新ブランドを同じ土俵で出してよいのか、全く違うHPを作るべきではないのか、その辺を確認してもらえませんか?でないと制作費が無駄になりますよ。しかも誰も見てくれなくなって、結局社員も見なくなって、更新もされず埋没していくんです。私の友人の会社のHPがそうなんです。ですから、ただ記念だからと作るんじゃなくて、社内プロジェクトにした方がいいと思うんですが。」
『判った。社長に聞いてみるが、説明は君がやってくれ、俺では役不足だ。確か今日は外出されてなかったから、内線して確認してみるよ。』

■社員がみな喜ぶと思っていた社長だけに、説得は難しいかなと感じた沖田であった。さてその結果は…